小豆の栽培

「縄文時代から食されていた小豆の栽培」

■小豆は日本古来から食べられていた

福井県鳥浜遺跡から、小さな粒の豆が発見され、縄文時代にすでに小豆が食されていたことが窺えます。
「小豆」の記録は、平安時代に書かれた「古事記」にあり、その頃の辞書には中国で栽培されている小豆(しょうとう)は日本の小豆(あずき)と同じ作物と書かれています。つまり、小豆は日本古来の植物でもあるのです。
このように、古くから食されていた小豆に、中国からの赤い小豆は厄除け、ならびに邪気を払う力があるといわれる信仰が伝わり、祭りごとや祝いごとに食する風習が広まったといわれています。

■古来から食べられた小豆は

今日のように医学が発達していなかった時代に、食することで病気の回復や予防を行っていました。それは、今日の科学が解明していることと同じ用法でした。
科学的に分析された小豆の成分とその効能の概略を下記にまとめます。

  • ゴボウより食物繊維が多い
    小豆の食物繊維はゴボウの3倍もあり、腸内の水分の吸収と保持、腸の蠕動運動を活発にします。これが便秘解消の効果をもたらすとともに、腸内の有害物質の排斥も促します。
  • 小豆のポリフェノールはワインの2倍
    ポリフェノールがワインの2倍もある小豆は、生活習慣病やガンの要因といわれる活性酸素除去の効果が期待できます。水性のポリフェノールは、煮汁と一緒に食する小豆ではポリフェノールを効果的に摂取できる食材です。
  • ビタミンB群が豊富
    小豆は、日本の主食の米で不足するビタミンB1の摂取に最適な食材でもあります。江戸時代、脚気予防に赤飯が推奨されたそうです。
  • サポニン・カリウムなども豊富
    その他に利尿作用があり、むくみ解消にも有効です。

■現在の小豆の生産と消費

昔の人は地域差の存在を知り尽くしており、4里四方の食材摂取が最適と、正に地産地消を行っていました。
江戸時代、小豆も地産地消されていました。ですが、近年は小豆の自給率が急激に減少し、今後も減少傾向にあるといわれています。効能のある古から食された小豆の現在の生産は、特に本州での生産が激減し、栽培面積が1/3以下になりました。国内生産の8割の小豆が北海道で生産され、消費量の3割は輸入に依存しています。輸入量は中国が最も多いです。

■小豆の栽培

小豆は暑さにも寒さにもよわい

小豆は、北は北海道から南は鹿児島までにおいて、栽培されています。
主産地の十勝平野が冷害に見舞われると収穫量は、平年の1/5以下になり、小豆が高騰するため赤いダイヤと呼ばれます。
ちなみに、十勝平野では10a当たり約220kgの収穫量があります。

また、開花前後に35℃の高温に見舞われると、折角花が咲いても花が落ちたり、受粉が熟さなかったりします。実りの時期の夜の気温が低くなく、雨が降らなければ収穫が見込まれます。小豆は夏小豆と秋小豆があり、平均気温12℃位が種まきの時期といわれます。発芽後の霜の恐れや、受粉・収穫の頃の霜の被害を考えて種まきが肝要です。

小豆のもう一つの大敵

小豆のもう一つの大敵は、色々な病害虫です。
落葉病、茎疫病、褐斑細菌病、モザイク病などがあります。病気の起きた場所での栽培は避け、同じ場所で4年以上作らないようにします。

■健康効果抜群の小豆の栽培を各地で取り戻そう

国内の小豆生産は、十勝平野の天候に左右されるといえましょう。
農業は、自然が相手です。自然災害はつきものです。国内の小豆の収穫が打撃を受けたからといって、輸入での補てんは困難です。何故なら、各国とも前年度に生産計画を立て、生産しているのですから日本の不足分の補てんができるとは限らないのです。

小豆は生活習慣病をはじめとする様々な病気に良い食材であり、これが安全、安心で安定した供給が確保されることが望まれるのは言うまでもありません。
このためには、昔のように各地で栽培されるようになることが望ましいのです。

今、地方の農業地域の過疎問題は深刻です。
農業従事者の高齢化と、それに伴い農地の放置などの問題も起きているのです。
荒涼とした農地をよみがえらせ、小豆の生産が各地でできるようにするには、過疎の農村への人力の確保を、都会と地方がともに方策を考える必要があるのではないでしょうか。