パン屋の売上を伸ばす方法

「スーパーに出店したパン屋のように鐘の音を響かせ「焼き立てパンができあがりました」という声を聞くと、ついつい足が売場に向いてしまいます。立地条件は違いますが、住宅街にあるパン屋も郊外の隠れ家的なパン屋も、基本は同じです。同じように、職人気質のパン職人が経営する街のパン屋でも賑わいを作り、リピーター客も新規客も楽しみに訪れるお店を作ることで集客を実現することが出来ます。

1)売れるパン屋は個性的で賑わいに溢れている

パン屋の集客を増やし売上を上げるポイントの一つは、「お店の賑わい」です。
お金をかけなくても、美味しくて個性の見えるパンの素晴らしさが広く伝わりお客様が集まり売上が伸びる簡単な方法があるのです。

広告費などの経費を増やさないで集客と売上が生み出せる方法として

  1. ブランディングの再確認
  2. POPで誘導して買う気にさせる売場づくり
  3. 他人の力を借りる広報宣伝と口コミと販路拡大
という三つのポイントからパン屋の賑わいと売上を生み出す実践手法をご紹介します。

2)ブランディング戦略によって個性を明確化

パン屋の個性は、「店舗デザイン」「商品のパン」「職人のこだわり」の三点で表現されます。この個性を客観的に再構築して、目標イメージを明確に描きます。

1 客観的な視点でブランディングを確認

常に経営の指針となる経営理念や業務遂行のためのコンセプトを、文字にして明確にしておきます。ホームページやショップの会社案内のページに掲載すれば、実店舗を知らないお客様の信頼感につながります。文字化した理念とコンセプトがなければ、今すぐ作りましょう。

経営理念とコンセプトを再確認
経営理念は、目標とする将来イメージを簡単なフレーズで表現します。お客様にも共感できるフレーズをイメージします。「○○と□□」に当てはめることから始めると簡単です。また、そのフレーズを補完する内容を文章にすると、理想に近い理念が浮かび上がってきます。
営業コンセプトは5項目(奇数が良い)ぐらいでシンプルな内容にします。
文字(言葉)にすることによって、目標を客観的に見つめ直し再確認することにつながります。
経営理念がすでに文字化されていれば、店舗デザインや売場との調和に違和感がないか確認してみます。生活用品が店舗や駐車場に置かれていると、雑然とした印象が広がりイメージ低下を招きます。掃除や環境整備、色のアクセントによって季節感の演出がされているかなどをチェックします。
外観と売り場を眺めながら物語をイメージする
経営理念に掲げた将来目標を、頭の中でイメージします。
忙しさや売上向上に思考が向いていて、じっくり営業方法を見つめる暇はなかったかもしれませんが、5年、10年先のお店と自分の姿が明確にその場でイメージ出来れば大丈夫です。
オリジナルのパンを家庭で囲むお客様の姿をイメージする
自慢のパンを買われたお客様が食卓で和む姿をイメージします。シーズンごとに企画したパンや、自慢のパンと他のパンを組み合わせて新たな提案ができているか確認できれば大丈夫です。自分の実現したいイメージが、お客様の求めるイメージとして共有できるかをもう一度確かめてみます。
製造販売しているパンの一つひとつの役割を再確認
お店の中心とするパンはもちろん、3~40種類あるかもしれません。カテゴリーに分けて販売比率や購入するお客様像をパンごとに明らかにします。売れなくなったパンもたくさん浮かび上がるはずです。整理することで、新しいパンを企画することにもつながります。

3)立ち寄りたくなるパン屋には賑わいが遠くから見えている

パン屋の売上を上げるには、遠くからでも認識される必要があります。
店頭まで歩みを進め、入店しパンを探す導線を最初からイメージして、店頭看板と店頭POP、売場のディスプレイとPOPになっているかを確認します。お客様をお店に導く導線の明確化です。

1 店内を賑やかにする定期企画とシーズン企画

認知度を高め集客を増やすために、賑わいの演出は欠かせません。「パン職人とパンのイラスト」や「焼き立てパンがあります」のような文字の入ったのぼり旗があれば、遠くからでもパン屋だとわかります。電飾看板も利用出来ます。

おしゃれなお店なので派手なPOPは採用できないという方は、店舗外観や入口付近の整備はもちろん駐車場のブロック一つまで統一感があるか細かくチェックします。全体のバランスを整えメリハリを印象付けるためには、雑然とする要素は取り除きシンプルな高級感を演出します。ガラス越しに店内が見えないお店は、職人姿の人形やイラストを立てておくことによって安心感が生まれます。

外観デザインは色のアクセントや季節に応じた色合いの変化をつけます。目立つと同時に、お店の存在をきちんと発信し続けることはとても大切な経営の基本です。

販促イベントも定期とシーズン、スポット、新商品発売などと組み合わせて実行出来ているかをもう一度整理することも必要です。思いつきではなく、営業リズムがお客様の共感を呼びます。

焼き立てパンの焼き上がる時間を知ってもらう
お客様の来店が多い時間帯に合わせて「焼き立てパン」を提供します。常連のお客様や店舗周辺に手くばりチラシで案内し、時間に合わせてのぼり旗やPOPも貼り出します。毎日、何かイベントを開催している、何か新しい発見がある、という小さな積み重ねが利益を生み出します。
また、定期的に「お客様感謝デー」のイベントを実施すれば、セールを楽しみにする人が増えます。
シーズンに応じた商品開発と販促企画も計画します。
来店頻度を高める定期企画とシーズン企画
店舗の外観は、手入れが必要です。汚れた看板は印象を悪くします。ワンポイントのアクセントが欲しいとときは100円ショップのディスプレイグッズに出向けば材料はあります。これで簡単に店頭や駐車場の季節感は演出出来ます。
立地にもよりますが、最近はウォーキングをする高齢者も多くいます。「朝から健康!天然酵母パンあります」という店頭POPを置いて心地よく迎えれば、毎日のように立ち寄るようになります。店の前を通る一人一人と、積極的にコミュニケーションを取る姿勢が大切です。

2 お客様がイメージできる直感刺激型のPOPが売上を増やす

売りたいパンには必ずPOPを用意します。キャッチコピーは、今、欲しくなる言葉です。
売り手が語り掛ける「もちもち感のあるパンに仕上げました」でも良いのですが、「今すぐ味わいたい!究極のもちもち感!」とか「食べて実感!これまでのパンは何だったの?」のように、お客様自身を主役にイメージしてもらうことで「美味しいパンって、そういえば・・・」と納得してしまう、直感を刺激する言葉を考えるのがコツです。

シンプルなディスプレイでパンの色と艶を印象づける
普段の店内ディスプレイは控え目にします。パンの色合いと艶が、派手な大きなディスプレイによって消されてしまうのを防ぐためです。
店頭や入口は通りやすく通路幅をできるだけ確保します。玄関口の案内看板は少し前に出し、通行する人から見えやすく斜めに配置して立体感を出します。
これから定年後のお年寄り夫婦のお客様が増えてきます。大柄な男性も多いので、通路が狭いと買い物も不自由で、極端に言えば回転率も下がります。店舗設計上はできなくても、什器や誘導看板の工夫でできることはたくさんあります。また、スペースがあれば軽くコーヒーが楽しめるコーナーを設けても良いでしょう。
売れるPOPは視線が向かう正面とコーナーに配置
一般的に、お店の入ったお客様は左側へと向かいます。トレイとトングの場所がすぐわかり、「一押しのオリジナルパン」へと進む導線をあらかじめ描いておきます。新商品のパンは売れやすいので、陳列場所を分けておきます。
棚のエンドは売り場を広く取って、人気のパンや数量が売れるパンを配置することで初めてお店を訪れたお客様でも買いやすくすることができます。コーナーには賞味期限の長い関連商品をPOPとともに配置するなど、導線のポイントごとに商品の前で足が止まる演出をします。

3 手づくりのセールチラシだけで来店頻度アップ

「チラシはなくても売れる」「わかる人にはわかる」という職人気質も大事ですが、チラシはメッセージです。安売りではなく、季節に応じて「新しい価値」を提案する大切な情報発信ツールです。
折り込みチラシや広告を打つことよりも、しっかりと情報として得意とするパンの魅力をお客様に伝えるという考え方が必要です。

気温が下がってくれば、シチューや野菜と組み合わせて、焼かずにもちもち感を味わいながら食べるランチパンとして提案することも出来ます。対象を絞り、若い主婦が友達と食事をする姿をイメージしてデザインチラシを用意するだけで売れ方が違います。

無料ダウンロードでできる売れるチラシデザイン
パソコンならワードを使ってチラシを作ることが出来ます。自分でデザインできれば一番良いのですが、出来なければ、無料デザインをダウンロードします。お客様のライフスタイルをイメージして検索すれば、無料サイトから写真をダウンロードも出来ます。
キャッチコピーは「売りたいコピー」よりも、買う人が自分のライフスタイル重ねてイメージ出来る言葉を優先して考えれば良い言葉が出てきます。
メッセージボードやカードで感謝を伝える
接客態度はもちろん、時にはメッセージカードを用意しておいて、買っていただいたお客様に渡します。1ヵ月に一度、来店客の多い日に合わせるように何日と決めておいても良いでしょう。小さな気遣いが、お客様にとってとても印象に残ることも多いものです。

4)お金を使わずにできるパン屋の集客のための広告宣伝と販路拡大策

宣伝広告にお金を使わず高い効果を生み出す情報発信がマスコミで取り上げてもらうことです。また、お客様との共同販売、口コミを作ることも出来ます。さらにインターネット販売を行うことも出来ます。

1 マスコミやお客様を味方につけよう

グルメ情報はマスコミがもっとも取り上げやすいネタです。テレビや地元の新聞、あるいはタウン紙、月刊で発行する情報誌はパン屋の新商品やイベントネタを待っています。また、自営業やお店を経営するお客様との共同販売を企画したり、口コミを堂々とお願いしましょう。自慢のパンであれば、あらためてかしこまらなくてもお願いできるはずです。情報は発信した者勝ちなのです。

マスコミに積極的なニュースリリース
住宅街や隠れ里のような店舗立地のパン屋は、マスコミも興味を持ちます。そこには、店主の味へのこだわりから生まれたパンが必ずあることを知っているからです。
開店時はもちろん、新しいパンを開発したらすぐにマスコミにニュースリリースをしましょう。試食をしてもらうこともポイントです。
最近はインターネットでも情報を募集しているので簡単です。
お客様の協力を得て新しい売場を共同展開
お客様の中には、レストランや小さなアクセサリーなどを販売している自営業者や会社経営者もいます。そういった方々に、双方に利益が生まれる共同販売の提案をしましょう。
そのためにも顧客管理を行うように心がけ、時には簡単なアンケートを計画して応募してもらいます。インターネットを使ったメールフォームも無料サービスがあります。スマホが使えれば、簡単にセッティング出来ます。インセンティブ(小さなプレゼント企画)も用意すれば回収率は上がります。
口コミ客を増やすならこだわり情報をどんどん発信しよう
また、新規の集客にはお客様の口コミがとても重要です。口コミを生むには、パンの特徴などを掘り下げて発信することがポイントです。「こだわりの材料」「作り方」、場合によっては「店名の由来」や「パン職人のキャリア」といった、商品以外の情報が効果を生みます。
これは、マスコミの情報と同じように、多くの人が知らない価値を伝える快感とともに、安心してそのお店を口コミできるようになるからです。パソコンで文字が主体のミニニュースを継続して発行するだけで効果はすぐに生まれてきます。

2 インターネットショップを開き全国販売

インターネットも実店舗と同じ地道な販売スタイルが現実的
ネット販売は、実店舗マーケティングの手ごたえができてから出店する心のゆとりも必要です。
ネットだから売れる、ということはありません。
商品をカテゴリーやテーマごとに分けて紹介し、お店のスタッフの顔やメッセージを添えます。デザインも大切ですが、最初は一人一人のお客様とのコミュニケーションが生まれるように、心のこもったメッセージを載せて手作り感だけでショップを開店しても良いのです。個性や商品に共感する人たちは必ずいるものです。
決め手はネット向きの高額商品と個性の演出
メイン商品は少し高いけれども、価値を打ち出した商品を企画します。メインはやはり、店主のこだわりパンであることがポイントです。また、特別に企画したお勧めの商品と、複数のパンを詰め合わせたお買い得商品も人気を集めます。
大掛かりに売らず専門店商売に徹する理由とは
ブームが去れば売上は落ちるので、一人一人お客様を増やす専門店商売に徹することが基本です。ネットだから何もしなくても良いのではなく、ページの更新や問い合わせへの対応、商品発送、入金確認など、多くの時間を割くようになります。
それでも、ネット販売はこれまで見なかった新しいお客様との出会いがあります。一人でも多く喜んでいただくことができれば、商売人としてこれほどうれしいことはありません。自分の個性、ブランディングが人々を惹きつけているのですから。

5)まとめ

パン屋に限らず、腕は確かで美味しいのにライバル店に勝てないお店はたくさんあります。
その原因の多くは、せっかく持っている無形の財産である「個の価値」がお客様に伝わらず、共有が出来ないために起こっています。

お店ならではの価値の再確認、つまりブランディングをきちんと行い、お店のコンセプトを表現して知名度を高めるためには、常に販促企画を打ち出しお客様を集める「にぎわい」が必要なのです。
そのにぎわいの演出は、パン職人であっても経営者として果たすべき重要な役割でもあります。