パン屋開業への道のり

「開業」。技術を持っていれば魅力を感じるこの二文字。パンをつくることが好きな人にとって、パン屋を開業するというのは、夢でもあり目標でもあり、到達したいスタートラインです。しかし、開業するのがゴールではありません。開業したご自分のパン屋を維持し、収益を上げ続けることをゴールとして始めることをおすすめします。パン屋を開業するというスタートラインに立つため、必要な情報をまとめてみました。

1)パン屋開業というスタートラインは「心構え」を持つこと

「趣味を仕事にしてしまうとストレスを抱えやすくなる」という意見を時々耳にします。でも、本当にそうでしょうか。“何かを始める”場合には、十中八九ご自分の大切なものをある程度我慢し犠牲にすることが必要な場合があります。「パン屋開業」という目標を持っている人にとっても同じことが言えるかもしれません。

1 本当に「始める」、それとも「始めたい」のか?

どんなに小さな店舗であれ開業するということは、それなりの集中力や技術、費用、人脈など必要になります。ですから、パン屋開業を目指してきたとしても、本当に「始める」のか、「始めたい」のか、よく考えることが必要です。“美味しいパンが好き”“美味しいパンが食べたい”“作ることが好きだから食べさせたい”など、開業を考えたきっかけはさまざまでしょう。

しかし、「パン屋開業」を考えたときから、必要な条件を満たすことができていた人がいるでしょうか。おそらく、ほとんどの人は素人かもしれません。ご自分の会社(店舗)を起業するという心構えを持ち、身につけた技術を向上させながら磨き、開業のために必要な資金を集めることが関係してきます。ですから、パン屋だけでなくどんな職業であれ本当に「始める」のであれば、必要な条件を満たすことを目標に一歩踏み出しましょう。

“必要な条件が満たせていない” “満たせる自信がない”と感じることがあっても、本当に「始めたい」ですか。そうであれば、ぜひパン屋開業のために必要な条件を自分のものにしてみてください。パンを製造し「開業」までのどの段階にいるかは別にして、すでに「始める」心構えが出来ていることになります。まず必要なのは、本当にパン屋を開業し「始める」という心構えがあってこそ、技術を磨くことが出来るのです。

2 初めての「開業」の際には「何を聞くか」

目指す店舗のスタイルやご自分の始めたい理想のパン屋がありますか。“まず”そのご自分の希望の方向を定めることは大切です。目標、つまり的がなければ、矢を射るにしても空(くう)を打つだけになります。周囲に相談することで、目標が高くなることもあるでしょう。しかし、逆にそんな到達できないところを目指してもなどと言われてしまうと揺らいでしまうことがあり得ます。

とはいえ、初めて「パン屋開業」に向けて歩き出すなら、会社(店舗)の起業に関して情報を集めることが必要です。インターネットや情報誌も参考になり大切ですが、実際に開業した人の心構えや経験などを聞くことが重要となります。オープンさせるまでには、想定外のことが起こったり苦労が続いたり、投げ出したくなるようなことも発生するかもしれません。ですから、集められる情報だけでなく、実際の話を聞いてみましょう。

目標とする的が遠くにあったとしても、はっきりと濃い色で掲げられているなら、ある程度妨げられることを避けられます。パン屋の開業を目指す際も同様です。開業するためにやらなければならないことは、山積みになるはずです。トラブルや苦労があったとしても、目標があるなら、パン屋開業という的に矢を射ることは必ず出来ます。

本当にパン屋を開業し「始める」と決めたなら、集めた情報や聞いた経験をもとに目標を明確にします。もうこれで十分!と思うことはないでしょう。開業した後にも役立つ情報や経験はたくさんあるはずですから、この習慣を大切にしてください。

3 「正解を求めないこと」は、自分らしく目指す店舗へ向かうステップ

パン屋開業を目指す人にお伝えしたい経験が一つあります。現在アジア滞在で小さなパン屋を経営して7年目、あるレストランのディナー用のパンを卸しているイタリア人男性のAさんの経験です。

イタリアで「16年前にパン屋を始め、当時の流れも良かった」と、初めての開業について話してくださいました。「集めた費用はぎりぎりだったけど、山あり谷ありでやっと開業出来た」といっています。日本でもイタリア料理は好評ですが、素材が豊富な“食のイタリア”の中で、「シンプルで飽きのこないパンを作ること」を目標に始めたそうです。

オープンした場所は、家賃も少し高めで、スペースは限られているけど人の集まるマーケットの近くで好立地。購入する人で列ができる日もあり、1年半が経過したときの売り上げは予想以上だったとのこと。そのため、2周年を目途に「種類を増やす」のはどうかという周囲の意見をもとに、当初の7種類から14種類のパンに増やしたそうです。
場所もよく、それまでの売り上げを考えたら、確かに「正解」に見えたそうですが、流れが良かったのは数か月。機材なども増やし店舗の拡大も行いましたが、売り上げは思うように伸びず3年を待たずに廃業することになりました。

「何が間違っていたのか」。開業を目指してから7年、それなのにたった3年で廃業するなど考えていなかったと振り返る日が続きました。「今になって再開業してみて言えるのは、正解を求めないこと。7年かけた開業までの積み重ねが「正解」だった。(店舗の)場所がいい、売り上げがある、それだけで拡大するというのは正解ではなかった」。

こうした経験に注意を留めるのは、パン屋開業に限らず、「始める」にあたっての重要なポイントといえます。もちろん周囲の意見に目を留めるのは大切です。しかし、開業というスタートに立ち、自分らしく目指す店舗を始めるのは、周囲ではなく「ご自身」です。
もちろん、自分らしいパン屋を開業する、と決めて進めてきた本人の私たち。パン屋開業という心構えを持ち、目標を掲げて必要な準備を整えた人でないと、進めていくことも難しくなるわけです。

2)パンを作るだけが技術ではない!製造と経営と経験

パン屋をオープンした後は、自分でパンを作りながら、雇用主として育成や指導を行い、切り盛りして経営する必要があります。言わば、野球でいう選手兼監督のように、「プレイングマネージャー」に似た働き方になります。

前述のAさんが、最初に開業したパン屋で「最初の1年で休んだのは9日間。家族旅行のときだけ」だったそうです。月に2日しかない定休日も出勤したり、社員やパートの面接や育成に時間を使ったり、働いたといいます。「家族とは夕食で会話ができたけど、朝3時過ぎには家をでる毎日。それでも、開業までの道のりを考えたら、休みがないことも気にならなかった」と楽しそうに語ります。

Aさんのように、開業までの道のりが順風満帆でなくとも、自分の店舗が開業できた満足感を語れる人はたくさんいます。パンを作るのが好きだから、パン屋を開業する…これは、目標として自然な流れです。しかし、目標だけでは進めません。お客様に喜んでいただける美味しいパンを作り、育成や指導を行い、利益を上げる、そのための「技術」が必要です。

1 パン屋開業に必要な技術【1】製造

パン屋の開業にあたり、ご自分でパン職人としてパンを焼くための「製造」技術を身につけることが重要です。技術を取得する流れとしては、調理系専門学校に進学し、パンの製造にかかわる基本的な知識や技術を学びます。パン屋に就職もしくは転職し、技術を磨きながら修行をするというのが、パンの製造技術を向上させる最善の方法です。つまり、「働きながら体で覚える」ということが大切になります。

パン職人の資格としては、「パン製造技能士」の国家資格を取得することも出来ますが、開業の際に必須ではありません。しかし、パン屋開業まで企業系のパンメーカーや有名ホテルやレストラン等の専属パン職人として、就職や転職の場合は取得することがおすすめです。とはいえ、パン職人としての技術は、資格よりも“どこで” “どのように”修行するかということが最大のポイントになりえます。

専門学校に通いながら資格を取り、就職もしくは転職するというのは、やはり費用や時間の調整が必要です。資格を身につけるまで、短期であれば平均1ヶ月、または半年から1年とも言われます。しかし、パン職人への修業は、パン製造技術を磨くための集中期間として、3年ないしは5年ぐらい見ても過言ではありません。作ることに集中するためには、小規模でも繁盛しているパン屋での修業がおすすめといえます。

2 パン屋開業に必要な技術【2】経営

パン屋開業のために転職する場合は、ある程度企業での勤務や就業は役立つかもしれません。とはいえ、開業するということは、最高経営責任者(CEO)になるわけですから、経営するポイントを学ばなければなりません。利益を上げるためには、材料の仕入れや機材管理だけでなく、効率の良い店舗運営、そしてなによりも労務管理が重要です。

一時期あるパン屋では、パートやアルバイトで雇用した人の入れ替わりが早く、育成に時間がとられていました。早朝の出勤があっても、どちらかというと時間給が低いということにも問題があったようです。頻繁に入れ替わる新しい人の育成や指導は、時間の浪費だけでなく利益の損失にもなります。バランスを取った募集や採用、アイディアを働かせた指導法や対応で、利益の出る体制を作りましょう。

お客様が買いに行きたくなるパン屋は「こだわりのパン」をつくるような店舗かもしれません。しかし、こだわりにも限度が生じます。例えば、原材料にこだわって作る際には、パンに関わる原価は通常よりも高くなることもあります。こだわりのパンを作っても、原価を超え利益の上がらないパンを作り続けては、経営を続けていくことは出来ません。

パン屋開業のときには、材料費・労務費・店舗の家賃や光熱費など、すべてを反映させ利益を加えた値段設定をすることが必要です。こうした経営技術は、繁盛している店舗で学ぶという方法がおすすめです。ただ美味しいパンを作る職人ではなく、目的意識を持ち集中して学ぶなら、数倍速く技術と共に経営を学ぶことが出来ます。

3 パン屋開業に必要な技術【2】経営

パン屋を開業するという目標において、ご自分の位置はどの場所にありますか。専門学校に通っているでしょうか?それとも、修行中ですか?パン屋開業を目指して、転職や就職を検討していますか?

いずれにせよ、“今”パン屋を開業するという目標があるなら、今までの経験もこれからの経験も重要です。どんな職業でも「石の上にも三年」と言われるように、パン屋開業のための修行や下積みは大切な経験です。特に、日ごとに店舗を動かし回転させていく力を身につけるには、パンを作るだけではない経験が求められます。

どんな職種でも、技術を習得するには「10年以上」と言われることがあります。企業でいうところの、仕事を任される主任や課長、管理職としてまとめる立場と同じような状況でしょう。しかし、一つのポジションを上がるために10年以上かけることは稀です。経験を積むことが出来れば、10年かける必要はないことが多くあります。

開業するという心構えは、管理職以上に高度な技術が必要かもしれません。とはいえ、経験は積むものであり、基本の上に重ねていくもの、身につけていくものです。ですから、可能な限り、早く開業することを目指すなら、「自分にできること、店舗でできること、開業に向けて必要なことなど、どんなことでも行う習慣を身につける」ことを目指して、修行し経験を積んでください。

3)パン屋開業に必要な資金の目安は?

パン屋開業のために学び、技術を磨きながら修行を積んできたので、店舗のオープンが身近に感じてきます。ここまで積み重ねてきたものを「計画」に移す“時”になりました。
ここで、実際に必要な資金はどのくらいか、大まかな配分を解説いたします。

1 パン屋の開業資金となるもの

パン屋やベーカリーを開業に必要な資金は、「開業費」に加えて「物件費(物件取得費)」「厨房設備費(機材費)」「内装工事費」などに分けることが出来ます。

2 「開業費」

店舗のオープンに伴い、ウェブサイトを立ち上げたり、広告費や宣伝費を使ったりする場合があります。また、パートやアルバイトを雇用するための、求人に関わる費用も必要です。店舗スタイルにもよりますが、保険等も必要となりますし、市街地に店舗を出すなら地区に支払う費用も発生します。年間で支払うこうした諸経費や雑費も含めて、少しの余裕を持たせておくことも大切です。

3 「物件費(物件取得費)」約600万~1000万円

多くの場合、継続的に支払いの生じる物件費、つまり店舗の賃貸に関わる費用は重要なポイントです。飲食店で重要なことは、立地条件が良いところに出店することによって、成功する確率を高めることになります。これはパン屋でも同じことで、立地条件が良いところに出店しましょう。

店舗の場所が決まったなら、物件取得費と店舗の改装費用に分けて計算する必要があります。なぜなら、開業資金の中心となるのは、物件にかかわる費用が大きな割合を占めるためです。

“どこに”店舗を構えるか?立地条件へのこだわりはポイント

パン屋は、必ずしも繁華街に出店しなければいけない訳ではありません。小規模なパン屋の場合、住宅地の中に出店して多くのお客様を集めている店舗もあります。繁華街でなくても、出来れば路地裏よりは、ある程度交通量が多いか、人通りのある道路沿いに出店したいところです。

人通りが多いか少ないかは、実際に現地に足を運び、人の流れを見ましょう。また、ライバル店の場所も重要な要素です。周辺に同じパン屋があると、競合してしまうためお客様が分散されます。できるだけライバル店が少ないところを選ぶのもポイントです。 店舗の大きさや立地条件によっても異なってきますが、1ヶ月分の前払い家賃に加えて敷金・礼金が発生します。また、テナントとして出店する場合、6ヶ月以上の保証金や1-2年の保険等が発生することもありえます。人の集まりやすい場所に構える店舗の方が繁盛します。ビルであれば1階部分や戸建てであれば駐車スペースも考慮」する必要があります。

物件の取得にかかわる内訳と費用の相場

物件取得費の中で大きな範囲を占めるのは、「保証金」となります。店舗移転時には返金される金額ですが、毎月の家賃の6~12ケ月分が店舗のテナント契約時に必要になる費用です。返金時にも、テナント借り主側にとって不利な場合が多く、次のテナントが決まるまで返金されない場合もあります。契約解除=返金とならないこともあるため、契約時の確認と契約書のチェックは欠かせません。

また、「初回家賃」には、使用開始当月の日割り分、翌月1ヶ月分のテナントの家賃の支払いが必要です。そのため、いつから内装工事を開始するかで、家賃の支払いが発生する日が確定します。店舗の内装工事の開始日から、日割り計算が始まると考えましょう。しかし、物件オーナーによっては、店舗入居日から日割り計算することで、家賃の発生する日を調整してくださる場合もあります。契約前に交渉してみることもおすすめです。

物件取得でかかる費用に含めておかなければならない項目に、「仲介手数料」があります。不動産会社もしくは管理会社に支払う手数料として、入居前に必要となりますので、準備しておきましょう。

<月ごとの家賃が30万円の参考例>※10月10日に入居の場合

保証金:30万円×6か月=180万円
前払い家賃:21万円(使用開始当月分)+30万円(翌月分)=51万円
仲介手数料:30万円×1ケ月=30万円
<合計>261万円

店舗の内装工事のポイントと工事費用の相場

物件取得費につづき、内装工事費(約30~40%)も重要な項目になります。店舗の立地条件や場所を決定する場合同様、納得のいく店舗に仕上げる必要があり、ときには売り上げにかかわるポイントとなるでしょう。

工事の準備にあたっては、工事価格があいまいにならないよう業者任せにしてしまうことも避けなければなりません。そのため、各業者の見積を同じ項目で比較できるようにして、査定することが必要です。いくつかの業者から見積を依頼し、場合によってはVE案なども取り寄せることが関係しています。

「内装工事」としての工事費用と共に、工事価格も把握しておく必要があります。パン屋を開業する場合の内装工事費用の相場は、店舗面積20坪とするなら坪単価約30万~50万円といわれています。テナントの内装工事業者が、工事金額が約600万~1000万円であれば標準となることを確認しておきましょう。

工事の種類には以下のような実施される工事があります。大まかな手順に合わせて説明しましょう。

(1) 仮設工事

店舗のテナント予定のビルが入っている建物に、外壁に沿って足場を組み立てる場合や、内装工事をする時に天井や壁の仕上げのための仮設設備を指しています。また、仕上がった場所を保護するために、養生材を張っておくことも仮設工事に含まれます。

(2) 軽鉄・ボード工事

LGS(軽量鉄骨)で組み上げられていく間仕切り壁などは、壁や室内の仕切りに重要な工事です。そのLGSに石膏ボードや木パネル(コンパネ)等を貼り上げて、内装の壁を仕上げていきます。

(3) 左官工事

床の平面にかかわる仕上げや壁のモルタルや漆喰など、塗ったり、貼り付けたりする作業が左官工事に含まれます。近年では、テナントに合わせた仕上げのために吹きつける工事もあるようですが、塗装工事に含まれる場合もあります。いずれにせよ、パン屋を含む飲食店の場合は、オリジナリティーのある仕上げにするために重要な工事ともいえます。

(4) 防水工事

飲食店や製造の過程のある店舗に必要な防水工事は、パン屋の場合にも厨房の床に塗膜防水を実施することで行えます。厨房は、パンの製造過程や清掃に水を使用するので、下階への漏水を防ぐ重要な防水工事です。塗膜防水は屋内の仕上げ工事にも使用され、1平方メートル当たり約7000円~1万円が相場となります。

(5) 電気・空調設備工事

店舗に必要な電気配線や給排水を整える工事です。厨房のシンクや水道に関する工事、衛生設備に関する工事がこれに含まれます。トイレ・洗面台・空調機器(室内機、室外機)・照明器具・厨房機器への電力の供給などで完成するものです。VE案などの対応があまりないため、設備工事の場合には、価格がある程度決まってしまうこともあるため注意が必要です。とはいえ、器具など後付けのもので価格を下げることは可能かもしれません。

(6) ガラス・建具工事

店舗エントランスに取り付ける扉や引き戸、自動ドアや半自動ドアなど、店舗に合わせた扉を取り付ける工事のことです。鋼製建具・木製建具など素材も選ぶことができますが、厨房の調理器を使用する範囲には防火機能や気密性の建具を使用する必要があります。外部からの景観もガラス窓の設置により、魅力的なイメージを加えられますので、ファサードを意識した検討がおすすめです。

(7) 木工事・造作工事

インテリアで重要な工事である木工事・造作工事は、職人の技術ともいえる匠の技のなせるところともいえます。商品を陳列する棚のみを造作するだけでなく、カウンターや家具なども制作することが可能です。店舗に合わせたオリジナリティーのあるイメージがあるなら、購入するよりも自由なスタイルで仕上げてもらうことも出来るでしょう。

(8) 内装工事

床のタイルやフローリング、壁のクロス、天井の化粧ボードやスケルトン工事など、店舗のイメージを作り上げる重要な工事です。近年人気のあるスケルトン仕様など利点もたくさんありますが、費用が上がるため業者との打ち合わせは重要になります。タイルやクロスも、素材により価格帯が変わるため慎重に検討しましょう。

(9) 塗装工事

外装・内装共に、左官工事の後に実施する仕上げ工事で、塗装で行う場合の重要な工事です。タイルやクロスを使用するよりも安価で、色なども自由に選ぶことができます。

(10)サイン工事

店舗に合わせた看板つまりサインを取り付けるのは、集客のイメージにも重要です。物件の入っている建物にもよりますので、物件オーナーに確認する必要もあるかもしれません。

(11) 諸経費・雑工事・竣工検査

工事中の現場管理やデザイン、設計費などを含めて、10~15%が相場です。また、工事の進捗や完了合わせて必要になる細かな工事があるかもしれません。そして、工事完了後の検査で指摘される事項などの修正工事やクリーニングを含めて、雑工事のための費用も考えておきましょう。

4 「厨房設備費(機材費)」 約300万~800万円

「パンが焼きたい」との思いで開業に踏み切るわけですから、必要な専用機器をそろえる準備も欠かせません。改行に際してそろえる際の厨房機器は、中古品で賄うことができるでしょう。ただし、ポイントとなるのは「どんな中古屋から買うか」という点です。コネクションがある場合や信頼できる中古厨房機器屋は、機器の販売だけでなくメンテナンスまでの調整も安定したサポートが可能になります。

中古厨房機器でも高額な商品になりますが、古くなった部品の交換を販売価格に含める場合もあります。こうした購入後の対応とメンテナンスが可能かどうかで、厨房機器屋を選定しましょう。販売店もしくはサービスセンターから店舗までの距離も重要です。遠方の場合は、修理対応やメンテナンスの対象外となることもあり得るため、機器導入時に近郊のメンテナンス業者を紹介してもらうことも出来ます。

また、保管用の大型コールドテーブル(保管専用冷蔵庫)なども中古でそろえることもできます。しかし、ミキサーやオーブンは比較的故障率が高いため、新品で購入するというのも一つの考えです。

購入時の価格にもよりますが、中国製を購入するか国産の機器を使用するかという点も検討したい点です。中国製ならざっくり国産の3割以下での購入も可能ですが、メンテナンスを考えると使い捨てになる可能性もあります。パンの製造量とのバランスにもよりますが、多少の改造も可能です。この場合、欧州天板1枚刺し2段+ホイロ6段で、80万弱との価格にもなるかもしれません。

<パン屋の基本的な厨房機器>

  1. 1 ミキサー
  2. 2 パイローラー
  3. 3 オーブン、フランスパン専用オーブン
  4. 4 フライヤー
  5. 5 急速凍結庫・冷凍庫・冷蔵庫
  6. 6 バケットモルダー
  7. 7 クレセントモルダー
  8. 8 リバースシーター(パイローラー)
  9. 9 包餡器

5 店舗の規模に合わせた厨房機器の購入を

ここで取り上げてきたように、店舗をオープンしパンを形成するための備品は、数多く必要になります。生地を捏ねるための機器や、さまざまな厨房用の機器を揃えなければなりません。しかし、大型の機器であれば中古品などの検討もできますから、店舗規模に合わせて300万~800万円用意する必要があります。また、メンテナンスや壊れたときの買い替えなどのリスクを考えておく必要もあるでしょう。

4)まとめ

費用だけを考えてしまうと「高い」「難しいかも」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、開業した店舗は、あなたご自身の物で長年思い描いてきたパン職人としてのスタートになります。目標を持ち始め、「パン屋開業」を始めるという心構えのもとで進めてきた道のりは、時間も費用も全て、「財産」であることを忘れないでください。